大卒でなくても「技術・人文知識・国際業務」で外国人を採用できる ―― 職歴ルートと「業務の中身」の整え方
外国人エンジニアや専門人材を採用したいが、「本人に大学の学位がない」「学校で専攻した分野と仕事が違う」という理由で諦めていませんか。在留資格「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる技人国)は、学歴要件だけが入口ではありません。一定の実務経験があれば学位がなくても認められる道があり、加えて「その仕事が本当に技人国に当たるか」という業務内容の組み立てが、採用可否を大きく左右します。
本稿では、企業の採用・人事ご担当者向けに、(1) 学歴に代わる職歴ルート、(2) 業務内容を技人国に「読める」形に整えること、の2点を公的根拠に沿って整理します。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは
技人国は、自然科学・人文科学の分野の技術や知識を要する業務、または外国の文化に基盤を持つ思考・感受性を要する業務に従事するための在留資格です。出入国在留管理庁は該当例として、機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者などを挙げています(出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」)。
許可されるためには、おおまかに次の2つを満たす必要があります。
- 行おうとする活動が技人国の在留資格に該当すること(活動の中身の問題)
- 上陸許可基準(基準省令)に適合すること(本人の学歴・職歴などの要件の問題)
このうち学歴・職歴の要件は「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令」(平成2年法務省令第16号)に定められています。
学歴がなくても道はある ―― 職歴(実務経験)ルート
技人国の「技術・知識を要する業務」に従事する場合、本人は基準省令上、次のいずれかに該当すれば足ります。
- 当該技術・知識に関連する科目を専攻して大学を卒業(またはこれと同等以上の教育を修了)
- 当該技術・知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(専門士・高度専門士に限る)
- 10年以上の実務経験を有すること
つまり、(1)(2)の学歴がなくても、(3)の「10年以上の実務経験」を満たせば基準に適合し得ます。これは法令上明記された正規のルートであり、例外的な裏道ではありません。
「10年」の数え方には幅がある
ここで重要なのは、10年の中身です。出入国在留管理庁のガイドライン「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について(令和8年4月15日改訂)」(別添3)は、次の点を明らかにしています。
- 実務経験の10年には、大学等において関連科目を専攻した期間も含まれる(同ガイドライン 4ページ)
- 技人国に該当する業務に10年従事したことまでは求められず、関連する業務に従事した期間も実務経験に含まれる(同ガイドライン 4ページ)
学校で学んだ期間も算入できること、また「ど真ん中の業務」だけでなく関連業務の期間も拾えることから、実務経験ルートは見た目の印象より使える場面が広いといえます。
ただし「単なる経験の積み上げ」では足りない
一方で、無条件に10年あればよいわけではありません。同ガイドラインは留意点として、従事しようとする業務は学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的技術・知識を必要とするものであって、単に経験を積んだことによって有している知識では足りず、学問的・体系的な技術・知識を必要とする業務でなければならない、としています(同ガイドライン 25ページ)。
ここが実務上の勘所です。10年の経験を「証明書として揃える」ことと、その経験が指し示す仕事が「体系的な専門性を要する業務」だと審査官に伝わることは、別の作業です。職歴ルートで申請するときほど、後述の業務内容の組み立てが効いてきます。
「国際業務」側にも実務経験ルートがある
なお、翻訳・通訳・語学指導・広報・宣伝・海外取引・デザイン・商品開発といった「外国の文化に基盤を有する思考・感受性を要する業務」(いわゆる国際業務)に従事する場合は、関連業務について3年以上の実務経験が要件です。ただし、大学卒業者が翻訳・通訳・語学指導に従事する場合はこの実務経験は不要とされています(同ガイドライン 5ページ・25ページ)。
「業務の中身」が技人国に該当するように整える
学歴・職歴の要件を満たしても、肝心の仕事が技人国に当たらなければ不許可になります。在留資格該当性は在留期間中の活動を全体として捉えて判断されます。
同ガイドラインは、技人国に該当する活動が全体のごく一部にとどまり、その余が特段の技術・知識を要しない業務や反復訓練で従事可能な業務である場合には、技人国に該当しないと判断される、としています。逆に、技人国に当たらない業務が含まれていても、それが入社当初の研修の一環で、今後専門業務を行ううえで必ず必要となり、日本人社員も入社当初は同様の研修に従事するといった場合には、技人国に該当するものとして取り扱われます(同ガイドライン 別添3「業務該当性」の項)。
実務上、ここで企業がつまずきやすいのは次のような点です。
- 雇用契約書や職務内容が、現場作業・据付・保守・反復作業を中心に読めてしまう
- 技術職として採用するつもりでも、書面上は「技術連絡係」「現場サポート」のように専門性が伝わらない表現になっている
- 複数の業務が混在し、専門業務が全体の一部にしか見えない
対策はシンプルで、雇用契約・職務記述・活動内容の説明を、技術や専門知識を要する業務が中心であると読める形に整えることです。これは事実を歪めるという意味ではなく、実際に行う専門業務を正確に・過不足なく言語化し、付随的な作業に埋もれさせないという作業です。採用する仕事が本当に専門性を要するものであれば、それが書面から伝わるように設計するだけで結果は変わります。
行政書士が関与する意味 ―― 申請の「伴走」ができる
ここまで読んでお分かりのとおり、技人国の申請、とりわけ職歴ルートでの申請は、「書類を集めて出す」だけの作業ではありません。
- 本人の経歴のどこを10年に算入できるか、関連業務をどう拾うかの設計
- 経験が「体系的な専門性を要する業務」だと伝わる履歴書・在職証明の整え方
- 雇用契約・職務記述を技人国に該当する内容に整えること
- 所属機関のカテゴリー(カテゴリー1〜4)に応じた提出書類の取捨選択
- 活動内容の詳細を、業務該当性の判断基準に沿って説明すること
これらは、要件を「満たしているかどうか」だけでなく、「満たしていることが審査官に伝わるか」までを見据えた設計作業です。行政書士のうち申請取次の届出をした者(申請取次行政書士)は、本人や企業に代わって申請書類を提出できるため、企業・本人・受入れ現場の三者の間に入り、要件整理から書面設計、提出・その後のフォローまでを一貫して伴走できます。
特に、企業にとって初めての外国人採用や、学位がないために難しいと感じていたケースでは、「そもそも申請できるのか」という入口の見極めから相談できることに価値があります。諦める前に、本人の職歴と仕事の中身を一度棚卸ししてみることをおすすめします。
参考(公的資料)
- 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」
- 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(令和8年4月15日改訂)(別添3) ※実務経験の算入:4ページ/実務経験ルートの留意点・国際業務の3年要件:25ページ/国際業務の実務経験:5ページ
- 出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の許可を保証するものではありません。具体的な事案は事実関係により判断が分かれます。個別のご相談は申請取次行政書士までお問い合わせください。
