特定技能「自動車運送業」等の追加分野における要件と採用のポイント
「自社の業種は特定技能で外国人を採用できるのか」「2024年に分野が増えたと聞いたが、どこまで対象になったのか」——外国人採用を検討する人事担当者から、こうしたご相談を多くいただきます。
特定技能制度の対象分野は2024年3月の閣議決定により大幅に拡充され、現在は計16分野となっています。新たに加わった「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」は、既存分野とは異なる独自の要件が設けられており、特に自動車運送業では運転免許の取得が必須です。
この記事では、企業の人事・採用担当者向けに、16分野の全体像、追加4分野の要件、そしてCOE(在留資格認定証明書)申請で審査される受入企業側の体制整備ポイントを整理します。
特定技能の対象分野は16分野に拡充
制度創設当初、特定技能1号の対象は14分野でした。その後、2022年に「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」が「工業製品製造業」として統合され12分野に再編。さらに2024年3月の閣議決定で4分野が追加され、現在の16分野となっています。
特定技能16分野一覧
| 分野 | 区分 | 備考 |
|---|---|---|
| 介護 | 既存 | 訪問系サービスは要件あり |
| ビルクリーニング | 既存 | — |
| 工業製品製造業 | 既存 | 旧・素形材/産業機械/電気電子を統合 |
| 建設 | 既存 | JAC加入等の独自要件あり |
| 造船・舶用工業 | 既存 | — |
| 自動車整備 | 既存 | — |
| 航空 | 既存 | — |
| 宿泊 | 既存 | — |
| 農業 | 既存 | 派遣形態可 |
| 漁業 | 既存 | 派遣形態可 |
| 飲食料品製造業 | 既存 | — |
| 外食業 | 既存 | — |
| 自動車運送業 | 2024年追加 | 運転免許取得が必須 |
| 鉄道 | 2024年追加 | 業務区分が細分化 |
| 林業 | 2024年追加 | — |
| 木材産業 | 2024年追加 | — |
なお、これは特定技能1号の分野です。特定技能2号については、介護分野を除く11分野(当時)で受入れが可能とされており、追加4分野の2号対応については運用要領の確認が必要です。
追加された4分野の受入れ要件
自動車運送業:運転免許の取得が最大のハードル
自動車運送業は、追加4分野のなかで最も要件が複雑です。業務区分は「トラック」「バス」「タクシー」の3つに分かれ、それぞれ必要な免許が異なります。
- トラック:第一種運転免許(準中型・中型・大型のいずれか、車両に応じて)
- バス:大型第二種運転免許
- タクシー:普通第二種運転免許
ここで人事担当者が見落としがちなのが、「日本の運転免許を取得する必要がある」という点です。母国での運転経験や外国免許があっても、外免切替(外国免許からの切替手続)または国内での免許取得が必要になります。バス・タクシーの第二種免許は外免切替の対象外であり、日本国内で新規取得しなければなりません。
さらに、技能試験・日本語試験に加えて、以下が求められます。
- 技能試験(自動車運送業分野特定技能1号評価試験)の合格
- 日本語能力:バス・タクシーは日本語能力試験N3以上(トラックはN4相当以上)
- 受入企業による新任運転者研修の実施
- バス・タクシーは接遇に関する研修が別途必要
タクシー・バス運転者にN3という高い日本語要件が課されているのは、旅客を扱う業務であり、道案内や緊急時対応で高度なコミュニケーションが求められるためです。人事計画上、採用から実際に乗務させるまでに数か月単位のリードタイムが発生することを前提に設計する必要があります。
鉄道:業務区分ごとの実務経験要件に注意
鉄道分野は「軌道整備」「電気設備整備」「車両整備」「車両製造」「運輸係員」の業務区分に分かれています。特に運転士・車掌にあたる運輸係員については、日本語要件が他区分より厳しく設定されており、また車両製造区分では溶接等の関連資格が問われます。自社がどの区分に該当するかを最初に確定させることが、申請準備の出発点になります。
林業・木材産業:安全衛生教育の実施体制が問われる
林業・木材産業はいずれも労働災害リスクが相対的に高い業種です。そのため、チェーンソー作業や機械操作に関する特別教育・安全衛生教育を、外国人が理解できる言語で実施する体制が整っているかが実質的な審査ポイントになります。また、両分野とも協議会への加入が受入れの前提条件です。
COE申請で審査される「受入企業側」の4つの要件
特定技能のCOE申請では、外国人本人の要件(試験合格・日本語能力)だけでなく、受入企業(特定技能所属機関)が基準を満たしているかが厳格に審査されます。ここが技術・人文知識・国際業務など他の在留資格との大きな違いです。
① 労務コンプライアンスの遵守状況
以下に該当する場合、受入れ自体ができません。
- 労働関係法令・社会保険関係法令に関する重大な違反がある
- 過去1年以内に非自発的離職者(同種業務の日本人)を発生させている
- 過去1年以内に行方不明者を発生させている
- 労働保険・社会保険・租税の未納がある
- 5年以内に出入国・労働法令違反による処分歴がある
特に見落とされやすいのが社会保険料の未納と非自発的離職者です。事業が苦しい時期に社会保険料の納付を遅らせていた、直近でリストラを行った——こうした事情があると、他の要件を満たしていても不許可となります。申請前に必ず自社の状況を洗い出してください。
② 報酬の同等性
特定技能外国人の報酬額は、同等の業務に従事する日本人労働者と同等額以上でなければなりません。COE申請時には「特定技能外国人の報酬に関する説明書」を提出し、比較対象となる日本人従業員の賃金水準を示す必要があります。
「最低賃金さえ上回っていればよい」という理解は誤りです。比較対象となる日本人がいない場合は、賃金規程や近隣同業他社の水準に照らした合理的な説明が求められます。
③ 1号特定技能外国人支援計画の実施体制
受入企業は、以下の10項目の支援を実施する義務を負います。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
これらを自社で実施する場合、過去2年間に中長期在留者の受入れ実績があるなどの要件を満たす必要があります。実績がない企業は、登録支援機関に委託するのが現実的です。委託する場合でも、支援計画の内容そのものはCOE申請書類として提出するため、「登録支援機関に丸投げすれば安心」というわけではありません。
また、事前ガイダンスと生活オリエンテーションは外国人が十分に理解できる言語で実施する必要があります。通訳体制の確保も含めて計画を立ててください。
④ 分野別協議会への加入
全16分野で、受入企業は分野別協議会(特定技能協議会)への加入が必要です。COE申請時点で加入していることを証明する書類の提出が求められるため、採用が決まってから慌てて手続きすると申請が遅れます。
協議会の入会手続には所管省庁での審査があり、分野によっては数週間を要します。候補者の選定と並行して、協議会加入手続を進めておくのが実務上のセオリーです。
申請前チェックリスト
COE申請の準備に入る前に、以下を自社で確認してください。
- 自社の業務が16分野のどれに該当し、業務区分は何かを特定できている
- 社会保険料・労働保険料・税金の未納がない
- 直近1年以内に同種業務の日本人の非自発的離職者を出していない
- 比較対象となる日本人従業員の賃金水準を説明できる
- 支援計画を自社実施するか、登録支援機関に委託するかを決めている
- 分野別協議会への加入手続を開始している
- (自動車運送業の場合)免許取得までのスケジュールと費用負担を設計している
一つでも「わからない」項目があれば、申請準備を始める前に整理しておくことをおすすめします。COE申請は書類を出してから審査に1〜3か月かかるため、不備による再申請は入社時期の大幅な後ろ倒しに直結します。
まとめ
- 特定技能の対象分野は2024年の拡充により16分野となった
- 追加された自動車運送業では、日本の運転免許取得が必須。バス・タクシーはN3以上の日本語要件があり、リードタイムを長く見積もる必要がある
- COE申請では、外国人本人の要件だけでなく受入企業側の労務コンプライアンス・報酬同等性・支援体制・協議会加入が審査される
- 社会保険料の未納や非自発的離職者の存在は、他の要件を満たしていても不許可要因になる
制度の詳細は随時改正されるため、最新の運用要領・分野別運用方針をご確認ください。
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- 自社の業務がどの分野・区分に該当するかの判定
- 受入企業要件の事前チェック(不許可リスクの洗い出し)
- 支援計画の作成、協議会加入手続のサポート
- COE申請書類一式の作成・提出代行
「そもそも自社は受入れができるのか」という段階でも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

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